紺色日記

fiction.

7月末

20240722

息ができない。でも、イヤホンをつけて音楽を再生して本を読み終えたらそこは私の世界になっていて、大丈夫になった。地方の片田舎でずっとそうやって生きてきた先に今の私があるのに、どうして忘れてしまっていたのだろう。私は過去の私を忘れない。しかし、都市部に移り全てが大きく変化して、水を得た魚のようにきらきらを追いかける今の私も愛する。


くるりのロックンロールを聴いて仰向けに寝転んでいたら泣いていて、部屋には私以外誰もいないのに手のひらで目を覆った。

 

20240724

早朝に大雨の音で目覚めて、そこから再び眠ろうと思ったら不安が一気に押し寄せて来て、久しぶりに軽い過呼吸のような状態になった。深呼吸を繰り返しているといつの間にか眠れていたらしく、目覚めると落ち着いた感情になっていた。夢の中に友人の誰かが出てきて、その人と話していたら夢の中の自分は落ち着いていったような気がする。誰かは覚えていない。

東京の部屋に帰宅したら帰省に行く前の自分が頼んでいた古本三冊が届いていた。過去の自分の予想通り帰宅時のわたしは疲弊してしまっていたがそれを手にしたら気持ちが少し緩む感覚があり、過去の自分に感謝をする。

荷物をそのままにして、届いていた岡崎京子『リバーズ・エッジ』を読む。岡崎京子作品を読むのは初めてだった。手を止めることなく一気に読んで、この作品が好きだと思った。

各々が大丈夫なときに関わり合えれば。という思いのすぐ後に、各々が大丈夫なときなんてあるのだろうか?と思う。傷やある種の不安定さだけではないけれど、それぞれがそれらを抱えているところも含めて繋がれているのだと思う。大丈夫ではないままに度々途切れたり繋がれていたら良いのかもしれない。だから私は、不安定なまま、どこか壊れたまま、解決しないまま繋がる人々の姿が描かれた『リバーズ・エッジ』を好きだと思ったのかな、などと考えた。

私はおそらく約束を遂行していて、それが不思議である。

 

20240730

一日の終わりになるとアルコールで思考をつぶして強制シャットダウンさせたくなるので帰路で缶ビールかハイボールを買うが、家で飲むと飲み切れなくて(美味しく感じないから)半量を流しに捨てる、みたいな日々が続いている。排水溝にお酒を注ぐ度、何やってるんだろうな と思う。だから昨日の帰りにスーパーに寄ったときには(缶は勿体無いからワインを買おうか)とも考えたけど、おそらく今の自分にとってアルコールは危うい位置にあるのだろうと自覚してやめた。

“もう、すべて、忘れたい” という、ある人の文章に出てきた言葉がリフレインする。一時でも良い。刹那的にすべてから引き剥がされたいのだ。

他者に寄せていた感情の機微がさらに後景へと遠のく。情緒面は削がれ切ってしまっていて、何も感じない。

わたしの首に手を当て、そのまま。

夢の中で自分が誰かと話していて「次実家に帰るのは…いつになるのか分からないですけど」と言っていた。

久しぶりに、好きなアーティストを知るきっかけとなった曲を再生する。その歌声を初めて聴いたときのように心臓の隙間へと滑り込まれる。

感覚を奪われるならこの方(ほう)が良い、と当然のことを思った。

 

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〆: ‎sk🐋の2024. 07 - Apple Music